5分でわかるトレンドワード SAF(持続可能な航空燃料)

要約
●持続可能な航空燃料「SAF」●SAFが求められる背景
●揚げ物の油で飛行機が飛ぶ?
●国内の動向
●まとめ
持続可能な航空燃料「SAF」
ビジネス、プライベートとも空の旅は非常に身近な移動手段となり、GWなどの大型連休ともなれば、インバウンドや国内の旅行者で空港が大混雑するのが季節の風物詩となっています。
いま、空の旅にもカーボンニュートラルの大きなトレンドが訪れているのをご存知でしょうか? それがSAFです。
SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、持続可能な航空燃料のことです。従来のジェット燃料の代替燃料として近年大きな注目を集めており、従来の航空燃料よりも温室効果ガスの排出を大幅に削減できると期待されています。
SAFが求められる背景
SAFが注目される背景には、環境問題が大きく関わっています。
航空機の燃料は石油由来のものであり、大量の二酸化炭素(CO2)を排出し、地球温暖化の一因となっています。さらに航空機は他の公共交通手段に比べてもCO2排出量の多くを占めることが下の図からも見て取れます。
例えば、東京―ロサンゼルスを大型機のボーイング777で飛行すると、ドラム缶477本分を消費し、CO2排出量は241トンになります。
そこで自動車やバスなどで脱炭素化が盛んに進められているのと同様に、航空業界の脱炭素化も急務となっているのです。
輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(旅客の場合)

※出典: 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

※出典:国土交通省: 航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会
https://www.mlit.go.jp/common/001403136.pdf
揚げ物の油で飛行機が飛ぶ?
SAFの原料には、廃食用油、バイオマス、廃プラスチックなどがあります。近年有望視されているのが、家庭や飲食店から排出される使用済みの食用油を再利用するものです。廃食用油は従来廃棄物として処分されていましたが、食用油のほとんどは植物から作られているため、環境負荷が低く、持続可能な資源として注目されています。廃食用油を原料とするSAFは、従来のジェット燃料と比べて、ライフサイクル全体で約60~80%のCO2削減効果※が得られるとされています。
※出典: 国土交通省 空のカーボンニュートラル
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk8_000007.html
国内の動向
世界各国の多くの航空会社が、「2030年SAF10%利用」を目標としているなか、日本政府も、2030年までに国内航空会社が使用する燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。
新しい燃料ということで、石油業界、航空会社、製造、サプライチェーンなど全体の取り組みが必要となっており、目標達成に向けて、官民協議会が設立され、技術的・経済的な課題を共有しながら急ピッチで取り組みが進められています。

※出典: 令和6年 資源エネルギー庁
第5回持続可能な航空燃料(SAF)の導⼊促進に向けた官⺠協議会事務局説明資料よりhttps://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saf/index.html
石油元売り大手各社ではSAFの安定供給や国産化に向けてSAF製造の事業化にチャレンジしています。また多くの地方自治体、全国チェーンのガソリンスタンド、スーパーなどで食用油の回収の仕組みが構築されつつあります。こうして廃油の回収、原料調達、製造、供給に至るSAFのサプライチェーンを目指して多くの企業が取り組んでいます。
※出典:資源エネルギー庁 SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saf_2024.html
まとめ
SAFは持続可能な航空燃料として、環境負荷を大幅に削減できる可能性を秘めています。価格やサプライチェーンの課題を克服するためには、さらなる技術革新と支援が必要です。SAFの普及が進むことで、航空業界の脱炭素化が実現し、持続可能な未来に向けた一歩となるでしょう。