5分でわかるトレンドワード 「デジタル赤字」
要約
●デジタル赤字とは何か?●年々増加していく赤字額
●デジタル赤字の問題点
●赤字削減のための施策
デジタル赤字とは何か?
デジタル赤字とは、日本がデジタル技術やサービスに関して、外国からの輸入に頼りすぎている状態を指します。
たとえば私たちが普段の生活で使っているサービスを連想してみてください。スマホのアプリであればInstagramやTikTok、動画配信サービスでいえばNetflix、音楽だとSpotify、クラウドサービスならGoogle DriveやMicrosoft OneDrive、買い物ならamazonといったサービスを日常的に使っているのではないでしょうか。
あまりにも身近になって忘れているかもしれませんが、これらはすべて海外のサービスであり、直接的・間接的にお金を支払っていることになります。こうした海外勢のサービスへの支払いに比較して、日本国内で開発・提供されるデジタル技術やサービスが海外で得る収益が少ないため、支出が増えて収入が少なくなる「赤字」状態になるのです。
年々増加していく赤字額
国内のデジタル赤字の額は年々増加傾向にあります。
デジタル庁が2024年6月に発表した 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、2023 年の「デジタル赤字」は 5兆3452 億円となっているとしています。国内のDXが進めば進むほどデジタル収支が悪化し「デジタル赤字」は拡大していく傾向にあるといいます。
出典:デジタル庁 「デジタル社会の実現に向けた重点計画 統合版(令和6年6月21日閣議決定)
PDF(18,787KB)より
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program#document01
経済産業省の2022年の試算では、2030年にはデジタル赤字は年間約8兆円に拡大するおそれがあるとしていますが、これを超えるペースで赤字額が増加しています。
出典: 経済産業省「次世代の情報処理基盤の構築に向けて」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0006.html
デジタル赤字の問題点
デジタル赤字が拡大するということは、国内のDX化が急速に進んでいる表れと見ることもできますが、やはり問題もあります。
まず1つ目は、一般の貿易赤字や輸入超過と同じく、海外への依存性が高まることによる経済の自立性の低下です。また最近のように為替相場が変化することで急激に価格が高騰するなどのリスクもあります。
2つ目として、海外市場における日本のデジタル技術やサービスの競争力の低下と見ることができます。技術の開発に遅れを取ると、将来的にさらに競争力が低下し、グローバルな市場での影響力が減ってしまうかもしれません。
3つ目として情報セキュリティのリスクもあります。今日では政府系や地方自治体、公共性の高い企業までが、外国製の技術やサービスに依存しています。この依存がすぎると、情報の流出やセキュリティのリスクが高まる可能性があります。
赤字削減のための施策
前述のデジタル庁の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でも、重点課題として「デジタル産業をはじめとする産業全体の競争力の低下」があげられていて、「データの蓄積・利活用が進んでいない、生成AI等の活用が進んでいないことなどから、産業全体の競争力が低下しているとともに、デジタル収支が悪化・拡大傾向にある。デジタル化を進め、生産性向上や新ビジネス創出が求められる」としています。
国内のデジタル化やDX化を進めるとともに、より高い生産性向上や新たなビジネスの創出といった成果を出すことが必要であり、そのためにデータ連携を進める仕組みの構築やデジタルトランスフォーメーション(DX)を担う人材の育成に取り組むことを重点施策としています。
出典:デジタル庁 「デジタル社会の実現に向けた重点計画
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program#03-3
またデジタル庁の河野大臣も7月の記者会見で、「デジタル収支について、デジタル技術が日本から海外に出ていっていないというのが最大の問題ですので、為替で直せる部分はその中の限られた部分だと思います。日本でもデジタル関係のスタートアップが増えてきていますが、まず日本市場を取りに行くということではなく、最初からできればグローバルのマーケットを見据えた活動というのが必要と思っているところです」と述べています。
出典:河野大臣記者会見(令和6年7月19日)
https://www.digital.go.jp/speech/minister-240719-01