5分でわかるトレンドワード 「リバースロジスティクス」
要約
●リバースロジスティクスは静脈物流●近年存在感を増すリバースロジスティクス
●リバースロジスティクスの課題
リバースロジスティクスは静脈物流
一般的なロジスティクスは、製品がメーカーから消費者に届くプロセスのことを指します。これに対してリバースロジスティクスは、製品や材料が消費者からメーカーなどの供給元へと逆に流れていくプロセスを指します。
リバースロジスティクスの例は、製品の返品、修理品やリコールなどによる回収、さらにはリサイクル、再利用、再販、廃棄など多岐にわたります。買ってみた商品が合わなくて返品したり、故障したので修理に出したりするなど、私たちがふだん当たり前のように行っていることです。
血液の流れになぞらえて、一般的なロジスティクスを動脈物流、リバースロジスティクスを静脈物流とも呼びます。動脈と静脈が人体にとってどちらも欠かせない働きを担っているように、リバースロジスティクスもまた、ロジスティクスが正常に動くために欠かせない役割を担っています。
近年存在感を増すリバースロジスティクス
リバースロジスティクスはもともと存在していましたが、近年の社会の変化に伴いあらためてその存在感が大きくなりつつあります。
その理由のひとつが、環境意識の高まりです。限りある資源の無駄を減らし、廃棄物の量を削減することで、環境への負担を軽減します。またリサイクルや再利用を通じて、資源の効率的な利用が促進されます。このようにリバースロジスティクスによって、3R(リデュース、リユース、リサイクル)やサーキュラーエコノミー(循環経済)が進展します。
社会や企業の大きなテーマであるSDGsとの関わりは非常に強く、
・「9.4 資源利⽤効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導⼊拡⼤により持続可能性を向上させる」
・「12.2 天然資源の持続可能な管理及び効率的な利⽤を達成する」
・「12.5 廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」
といったSDGsの掲げる目標の実現に、リバースロジスティクスは重要な役割を担っています。
自動車、電子機器、飲料業界などでは以前から資源回収や再利用などのサイクルが確立されていますが、近年になり、あらゆる業界でSDGsの高まりや、災害などに起因する資源リスク増大への対応から、リバースロジスティクスによる資源回収や再利用はより重要度を増しています。
もうひとつの理由が「返品」の増加への対応です。
ECサイト等の普及により、購入後に「思っていたものと違った」からと、返品するケースも増えています。例えば全米小売業協会(NRF)の2021年の調査によると、返品される商品の総額は7610億ドル億ドル(約106兆円)にのぼります。これは小売販売総額の約16.6%が返品されていることになるそうです。調査の2年前の返品率がおよそ10%だったことからすると急激な上昇と言うことができます。そしてネット通販の平均返品率は20.8%とさらに高い数値を示しているそうです。
※出典:2021年の米小売市場の返品総額は7610億ドル、市場全体の16.6%に相当https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/01/cb4a09750388a09a.html
近年では「返品」は重要な顧客接点の1つとされ、よりスムーズに返品できる仕組み、つまりリバースロジスティクスを高度化することで、購入時の不安を減らすとともに、顧客の自社に対する信頼感を高め、顧客ロイヤリティを向上できるというメリットもあります。
リバースロジスティクスの課題
リバースロジスティクスはさまざまな業界や企業で進展していますが、課題もあります。
通常のロジスティクスはある程度の予測が可能となっており、計画的な対応が可能です。しかし返品や回収の発生は予測が困難なため、配送や在庫などの手配がその都度になり、計画的で効率的な運用が難しいという課題があります。
これに関連して返品に関わる物流コスト、手続きや発送業務といった作業負担の増加も課題となっています。
リバースロジスティクスの高度化は社会の要請であり、企業にも大きなメリットがあることから、今後もさらに重要度が高まっていくことでしょう。